学校の学びを深める

スイミーや、ちいちゃんのかげおくり、大造じいさんとガンなど、小学校の国語の教科書には長年親しまれている作品たちが今もなお掲載されています。大人になった今は子どもの音読を通じて、場面の描写を想像しながらくすっと笑ったり、しんみりとした気持ちになったり…。いつ読み返しても味わい深い素敵な作品たちばかりです。そんな作品の中でも一年生の3学期に出会う「たぬきの糸車」は、おばあさんの真似をして糸車を回すたぬきの描写がとてもかわいらしい作品です。

息子の通う小学校でも、いよいよ「たぬきの糸車」の単元に入ったようです。想像だけで回していた糸車を実際に回してみたら、物語をもっと深く味わえるかもしれない。そう思い、糸紡ぎ体験のできる場所を調べて行ってみることにしました。

お世話になったのは栃木県益子町にあるコットンバンクさん。機械化される前の道具を使いながら綿の栽培から糸紡ぎ、糸を使った作品作りまでをされている、今では珍しい綿農家さんです。

部屋の中にずらりと並ぶ糸車に感動し、息子はさっそく大興奮。想像よりもずっと大きな糸車を前に「たぬきはけっこう大きかったのかもしれないね。」と言いながら糸車に向かいます。それからたっぷり一時間、温かな暖炉のある空間でスタッフさんの興味深い説明や糸に関するクイズに耳を傾けながら糸紡ぎ体験を楽しませていただきました。

糸車の操作は体験してみると思った以上に難しく、なかなか上手に糸を紡ぐことができません。面白かったのは、本当に作品内にあるように「キーカラカラ、キークルクル」という音がしたこと。スタッフさんによれば、プロがやると車輪を回すスピードが速くなるので「ブンブン」という音がするんだとか。「たぬきはプロではないから、キーカラカラという速さで糸車を回していたんだね。」体験したからこそわかる、気づきも楽しいものです。

それから、糸紡ぎはとてもとても時間のかかる作業で、手のひらに乗るくらいの糸巻一つ分を作るのに、プロの方でも2時間はかかるのだそう。「いたの間に、白い糸のたばが、山のようにつんであった」ということは、たぬきが何日も時間をかけて糸車を回していたということかな?恩返しの気持ちが強かったということかもしれないね。息子が実際に手で触れ、心で感じることができた糸紡ぎ体験。体験したからこそ感じ取れる細かな描写や心の動きは、本物の読み取り活動に繋がったようでした。

息子はその日、糸車の体験を6ページにわたってスケッチブックにまとめ、次の日大事そうに学校に持って行きました。学校の学びを広げたり深めたり、一緒に楽しんだりしながら豊かな時間を過ごす。家族にとっても思い出深い、贅沢な時間となりました。