
目の前に並んだ3つのカップ。目をこらし、指先でそっと触れ、鼻を近づけて…。それぞれの粉と向き合う子どもたちの姿から、これから始まる一日が特別な時間になる予感が漂っています。 6月28日、ここLOUPEで開催したのは「粉から始まる大実験」。 小学2年生から4年生までの8人が集まり、見て、さわって、食べて、粉の世界を丸ごと探究する一日が幕を開けました。
まずは、米粉・小麦粉・とうもろこし粉、3種類の粉の正体を探る推理ゲームからスタート。「これは、小麦粉じゃない?」「こっちはおせんべいのにおいがするかも」見た目や手ざわり、においを手がかりに、それぞれの特徴をさぐっていきます。
続いて、お菓子から粉を推理するゲームに挑戦しました。クッキーやおせんべい、ドーナツなど、8種類のお菓子を食べ比べ「何の粉からできているか?」を2チームに分かれて推理していきます。話し合いを重ねていくうちに「小麦粉のものが多い。」ということに気がついていった子どもたち。その後、小麦粉が古代から世界中で食べられてきた歴史に目を向けながら、実際に小麦の実から粉を取り出してみる体験にも挑戦。しかし、すりこぎを使っても、なかなか粉にはなりません。身近な存在でありながら、意外と知らなかった小麦粉の奥深さに、子どもたちの関心も少しずつ高まっていきました。
後半は、薄力粉と強力粉、2種類の小麦粉を使った実験です。それぞれの粉でピザとクッキーを作り、見た目や手ざわり、焼き上がりの違いをじっくり体験していきました。まずはピザの生地づくりから。薄力粉でこねた生地は手にべたべたとくっつき、まとまりにくく苦戦する様子も。一方、強力粉で作った生地はしっかり弾力があり、よく伸びて扱いやすいことがわかりました。
オーブンから香ばしい匂いがただよい、待ちに待った試食タイム。薄力粉で焼いたピザは、少し硬め。一方、強力粉のピザはもちもちとしていて、噛むほどに弾力が感じられます。クッキーでも粉のちがいははっきり表れました。薄力粉のクッキーはサクッと軽い食感に。強力粉で作ったものは、しっとりとやわらかな口あたり。おいしく楽しい、大発見です。
午後は、この不思議な食感の違いの秘密を解き明かすべく、小麦粉から「グルテン」を取り出す実験にもチャレンジしました。小麦粉に水を加えてよくこねて、さらに水の中で洗うように揉み込んでいくと…。でんぷんが溶け出して、手元に残ったのは、ねばねばとしたまるでガムのような塊です。実はこれが、パンをふわふわに膨らませたり、ピザをもちもちにしたりする正体、「グルテン」というタンパク質。実際に手で触って、伸ばしたり引っ張ったりしながら、その独特な粘り気や弾力を体いっぱいに感じることができました。
最後に、1日の学びを劇にして発表しました。2チームに分かれて、それぞれがシナリオを考え、配役を決めて練習し、本番へ。2種類の小麦粉を主人公に、敵と戦う物語やお菓子たちの会議のような設定など、どちらのチームもユニークなアイデアと学びのポイントがぎゅっと詰まった素敵な作品に仕上がりました。友だちと協力しながらそれぞれの役割を見つけ、ひとつの劇を作り上げる。そのプロセスは、決して簡単なものではありません。知識の習得をはるかに飛び越えて、自分の言葉で表現する力や、仲間と共に何かを成し遂げる達成感が詰まっているのを、確かに感じることができました。
食べて、触って、作って、そして表現する。身近な「粉からはじまる大実験」は、五感と思考をフルに使った密度の濃い時間となりました。「わかるって楽しい」「伝えるってうれしい」――子どもたちの心に、そんな小さな灯がともったことを願っています。