日常生活は、こどもにとって発見の連続です。大人にとっては当たり前のことも、彼らの目には不思議で新鮮なことに映るのでしょう。いたずらしているわけじゃない。わざと散らかしているわけでもない。「これを、〇〇したらどうなるのかな?」そんな気持ちから手を動かし、遊びという名の実験をしているだけ。そう思うと、摩訶不思議でダイナミックな息子の行動にも寛容になることができます。
ある日のお風呂あがりのこと。氷水の入ったコップをしげしげと眺めたあと、「氷って、どうやったら水になるのかな?」息子がつぶやきました。氷が溶けたら水になることはすでに何かの機会で理解をしていた彼ですが、今度はその条件が気になった様子です。言うが早いか、実験のはじまりです。早速3つのコップを取り出して、氷を入れ始めました。ひとつは氷だけのもの。2つめは水に入れたもの。3つめはお湯に入れたもの。水道のレバーハンドルを器用に操作し、あっという間に3パターンの氷が準備されていきます。何かを明らかにするために「比べる」という手段を身に着けていたことには驚きました。少し前、粉の配分を変えてうどんを作り、麺の硬さを比べたことがあったのですが、もしかすると、その時のことを覚えていたのかもしれません。
実験は、まだまだ続きます。「お湯が冷たくなってる!」温度の変化に気づいて今度は感嘆の声が上がります。それから5分ほど経過したでしょうか。彼は、おもむろに折り紙を取り出し、その裏に数字を書き始めました。「お湯は10ぐらいとけたかな。水は4ぐらい。氷はまだ解けてないから0だね。」氷の解け具合を数字で表し、実験結果をまとめようとしているようです。「実験結果を記録する」という手段の獲得まで、あと一歩といったところ。本人にとっては遊びのつもりでも、繰り返してくうちにトライアンドエラーが積み重なり、手段がどんどん豊富になっていくのを感じます。
大木が育つのは、栄養素の詰まった豊かな土壌があってこそ。こどもたちは、遊ぶように学び、学ぶように遊びます。そうして得られた驚きと発見が地層のように重なり、強い地盤となっていくのです。こどもの心が動く瞬間を大切に。 LOUPEでも、遊び心をもちながら日常の積み重ねを学びに昇華していけたらいいなとおもいます。