昨今、教育のキーワードになっている探究学習。書店でも、探究に関する書籍が数多く並ぶようになりました。その背景には、日本の教育課程に「探究的な学びが加わった」ことが要因の一つとして挙げられます。
2020年から順次改訂を迎えた新学習指導要領。今回の改訂では学びが大きく進化しています。教育で育む力は、従来の「知識や技能」に加えて、「学んだことを社会に生かそうとする力」や「未知の状況にも対応できる思考・判断・表現力」の3本柱となりました。「学校で学んだことが、明日、そして将来につながるように」という願いを込めての大改革です。
そして、そのアプローチ方法として選ばれたのが探究学習。小中高全ての学校で「探究的な学び」が取り入れられ、小中学校では「総合的な探究の時間」として、高校では「古典探究」や「理数探究」をはじめ、7つの探究科目が設置されることになりました。学校ではすでに、探究的な学びがはじまっています。
では、なぜいま国を挙げてまで探究学習に注目が集まっているのでしょうか。それは、私たちの想像をはるかに超える、変化の激しい予測不可能な時代が到来しているからに他なりません。ロシアとウクライナの戦争、仮想通貨の台頭、パンデミック…ここ数年の出来事を振り返っても、一昔前には想像もできなかったことが次々と起こっています。コンピュータが人間の認知能力を上回り、これまでのような正解を求める教育スタイルでは時代の変化に太刀打ちできなくなっているのです。文部科学省が、それぞれの教科名に「探究」の二文字を入れたことの意味。それは、そんな予測不可能な未来に向かう教育を抜本的に変革したいという意思の表れなのではないかと思います。実際に、文部科学省のHPにはこんな記述があります。
解き方があらかじめ定まった問題を効率的に解ける力を育むだけでは不十分である。これからの子供たちには、社会の加速度的な変化の中でも、社会的・職業的に自立した人間として、伝統や文化に立脚し、高い志と意欲を持って、蓄積された知識を礎としながら、膨大な情報から何が重要かを主体的に判断し、自ら問いを立ててその解決を目指し、他者と協働しながら新たな価値を生み出していくことが求められる。
私たち親世代にとっても経験したことのない、新しい学びの在り方が始まっています。いかに効率的に正解にたどり着くかが重要視されてきた従来の学校教育。そこではテストの順位や偏差値といった数値で、成果を測ることができました。しかし、探究的な学びで身につけるのは、主に非認知能力。その成果は簡単には数値化することができません。
では、目に見える数値では図ることのできない力を、どのように伸ばしていけばよいのか。教育の成果をどのように評価したらいいのか。高等教育の出口で待ち受けている大学入試に、どのように備えていけばよいのか。新たな学びを経験したこどもたちを待ち受ける「未来」も気になるところ。次回の記事では、変化が起き始めている大学入試にフォーカスし、新しい入試の在り方についてもご紹介したいと思います。