こどもたちがつくるレストランの舞台裏

前回ご紹介した「こどもレストラン」のプロジェクトがついに終了しました!ご協力頂いた馬場農園さん、ご来店いただいた地域の皆様、温かく見守ってくださりありがとうございました。本記事では、レストラン開催に向けたこどもたちの奮闘記をお届けしたいと思います。活動が始まったのは10月。ここから11月、1月と3回にわたり、本番に向けて準備を進めてきました。農園のお手伝いを通じてミニトマトが育つ過程を農家さんから学び、レストラン運営の計画を立て、試作を繰り返しながら、少しずつ形にしていったレストラン。「生産者さんの思いを伝える、ピザ屋さん」を目指し、こどもたちはどんなことを経験してきたのでしょうか。

馬場農園さんで学んだ、トマトが育つまでの時間

午前のメインプロジェクトは馬場農園さんでの体験活動でした。ミニトマトのアイコの栽培過程を見守りながら、3回にわたってお手伝いをさせていただきました。

初日となる10月は、ミニトマトの苗を植える「定植」をお手伝いしました。慣れない作業に、「腰が痛くなる!」と声をあげるこどもたち。また、「接ぎ木」という技術を使った工夫をされていることを教えていただき、「丈夫な根っこを借りて、おいしいトマトがたくさんできるんだね。」と驚く声があがりました。

11月に体験したのが、「わき芽取り」。気温はすっかり冬の入口といった寒さでしたが、ハウスの中はまるで夏のよう。暖房などの設備の工夫を目の当たりにし、冬でもおいしい野菜が食べられる秘密を知ることができました。

そして迎えた1月。いよいよ収穫です。赤く実ったトマトをひとつひとつ手に取り、「つやつやしてる!」と、その感触を確かめながら収穫を体験させていただきました。実は、今年は暖房の調子が悪く、ハウスの室温が思ったよりも温まらなかったため、トマトが大きく育ちすぎるという問題もあったそうです。こうした失敗談や苦労話は、日常の消費の場面では、なかなか知ることができません。馬場さんのお話や栽培のお手伝いを通して、こどもたちも、少しずつ生産者の思いが感じられるようになってきたのではないでしょうか。

「生産者さんの思いを伝えるピザ屋さん」を目指して

午後の活動は、レストランの準備に奮闘しました。まず取り組んだのは、レストラン運営に必要な仕事や役割を考えること。ピザを焼く人、注文を受ける人……。それぞれの役割の重要性を考えながら、どんな工夫をすればお店がうまくいくのかを話し合いました。その後、近隣のレストランに視察へ。「メニューの書き方にも工夫があるね」など、新しい発見がいっぱい。

さて、レストランの運営にはたくさんの準備が必要なこともわかってきました。話し合いの結果、店名は「トマピザ」に決定。「馬場農園さんのトマトを使った、おいしいピザ屋さん」を略して、「トマピザ」です。店名にもこどもたちの気持ちがこもっています。

メニューと値段が決まらない!?

2回目となる11月の活動では、ピザの試作と原価計算に挑戦しました。ピーマンやツナ、バジルなど、さまざまな味を試しながら、全部で8種類のピザを作りました。

どのピザもとても美味しく、「これは売れる!」と、満面の笑みを浮かべるこどもたち。試作は順調に進み、ワクワク感が高まります。そんな中、苦戦したのが原価計算でした。材料の価格と1枚のピザに使用する材料の分量から、ピザ1枚にかかる原価を計算するのですが、「割合」という概念を使うため、頭を使うとっても難しい作業なのです。小学校で習った四則演算のすべてをフル出動させる必要があり、5年生が大活躍してくれました。そしてついに算出されたピザの原価を知り、驚くこどもたち。

「1枚のピザをつくるのに、こんなにお金がかかるの?」「これじゃ儲からないじゃん!」普段何気なく見ている値段の意味がわかってきた様子です。最終的に、飲み物をセットにし、具材をシンプルにすることで利益を出せる価格に決定。ピザの種類も、味や見た目だけでなく、調理の工程や材料費などから、2種類に絞られました。

伝える準備も念入りに

最後に取り組んだのは、発表の準備と接客の練習でした。レストランで提供するピザについて、お客さんにしっかり伝えられるように、トマトが育つまでの過程をまとめることにしました。

パソコンを使って資料を作成し、「どんな写真を入れたら伝わりやすいかな?」「説明の順番はどうする?」と意見を出し合います。発表の練習も繰り返し行い、生産者さんの思いが伝わるプレゼンテーションが出来上がっていきました。さあ、次回はいよいよこどもレストランの本番です。こどもたちはこれまでの経験を活かして、お客さんにどんな時間を届けることができるのでしょうか。
「おいしいピザ、召し上がれ!」
次回の本番レポートもお楽しみにしていてください。