
「いらっしゃいませ!」
元気な声が響く店内。こどもたちが自分たちで準備を進めてきたレストラン「トマピザ」が、ついに開店の日を迎えました。
お店の準備から接客、調理まで、すべてをこどもたちが運営する特別な一日。普段は食べる側のこどもたちが、”つくる側”になり、お客様に料理を提供する。その経験の中で、どんな気づきがあり、どんな学びが生まれたのでしょうか。前回のレポートに続いて今回は、開店当日の様子をお届けします。
開店を迎えるまで90分。ピザをつくるだけではなく、お客様へのプレゼンテーションも予定されていたため、こどもたちは朝から発表の練習や接客の動線確認、台詞の練習などに大忙し。
ピザの準備では、具材の重さを計る子、ソースを生地に載せる子、お皿の準備をする子…、それぞれが役割を見つけ、手際よく作業を進めていきます。「これお願い!」「次はこっち!」自然と声を掛け合う姿が見られ、一体感が高まっていきました。
そして迎えた開店時間。ご家族で来てくださった方、地域の方々…。総勢20名のお客様が「トマピザ」に来店して下さいました。最初は緊張した様子のこどもたちでしたが、担当のテーブルにつくと、次第に笑顔になっていきました。「トマトの甘みが感じられる、美味しいソースです!」「おかわりのピザはいかがですか?」まるでプロのような接客ぶり。練習の成果がしっかり表れています。
馬場農園さんが育てたトマトを使ったピザも、大盛況。お客様から「おいしい!」の声が上がり、小さなシェフたちが顔を見合わせ、誇らしげに笑う姿が印象的でした。
レストランの目的は、ピザを提供することだけではありません。今回、こどもたちには「生産者さんの思いを伝える」という大きなミッションがありました。そこで準備してきたのが、トマトが育つまでの過程を紹介しながら、栽培の工夫や努力を伝えるプレゼンテーション。
当日に向けて、何度も何度も練習を重ねてきた子どもたち。本番では、大きな声で、堂々と、お客様に向けて生産者さんの思いを伝えることができました。接ぎ木や暖房の工夫、大変だったこと、驚いたこと…。自分たちが体験したからこそ出てきた思いを、自分たちの言葉で、まっすぐに伝える姿がキラリと光っていました。
レストランの仕事は、ピザを作って提供するだけでは終わりません。最後に大切なのが、お金の計算です。ピザを作るのに使った材料を振り返りながら、利益の計算に必要な要素をみんなで考えていきました。
「えっ!こんなにお金がかかるの!?」「もっとピザの値段を高くしたら良かったんじゃない?」
材料費だけでなく、お皿などの備品にもお金がかかっていること。それに加えて、本来は場所代や人件費(今回はないけれど…)がかかること。実際に計算してみると、想像以上にお金がかかっており、残念ながら、結果は… 赤字。利益は出ませんでしたが、その分、売上だけでなく、原価や経費の大きさが利益に影響するということを、身をもって体感することができたに違いありません。
ビジネスの仕組みを学ぶことも、このこどもレストランの大きな目的のひとつ。自分たちの手で作ったピザが売れ、その対価としてお金をいただく。その意味を、こどもたちなりにしっかり感じ取ってくれたようです。
こどもレストランは、一日限りの小さなお店。
けれども、この経験が子どもたちの中に残り、未来への種となってくれたら嬉しいです。最後に、ご協力いただいた馬場農園さん、そしてご来店いただいた皆さまに、心から感謝いたします。またどこかで、子どもたちの挑戦を応援してくださいね。