近道もまわり道も、教材研究からはじまる

学校の先生だったころから大切にしてきた教材研究。当時は1日6時間もの授業を受け持っていたこともあり、時間的な制約の中でやりきれないもどかしさを感じることもありました。LOUPEを始めた今、あの頃のもどかしさを取り戻すように教材研究を楽しんでいます。

ところで教材研究とは、読んで字のごとく教材を研究すること。先生というと、経験とスキルだけで授業ができるイメージがありますが、実際には教材研究こそ授業成功のカギを握る重要ファクターの一つ。こどもたちの個性や習熟度、興味、その時の社会情勢などによって、教材や授業の進め方を変えていく必要があり、同じ内容の授業を単純に繰り返すだけということはないのです。

では、教材研究では何を行っているのでしょうか。今回は、5年生の算数で最初に取り上げる「整数と小数の学習」を例に、LOUPEで行った教材研究を紹介してみたいと思います。

まずはじめに行うのは、ゴールの設定です。単元を通して、どのようなことを学び取ってもらうのか、何をどこまでできるようにすのかを言語化する作業です。この時に参照するのが、先生たちのバイブル『学習指導要領』。感覚頼りではなく、明確なゴールイメージがあるのはちょっと意外かもしれませんね。次に、ゴールに到達するまでの過程で、どのような学習を構成していくかを具体的にしていきます。興味付けになりそうな話題の投げかけから始まり、具体物と関わる活動を入れられそうか、発問や練習問題をどうするのか…。研究に当たっては、教科書はもちろん、先人たちの実践記録をまとめた書籍やブログ、ときには研究論文を参照することもあります。今回の授業で参考にしたのは、22年前に書かれた先生向けの図書。こうした良書との出会いが生まれるのも、教材研究の醍醐味です。

それから、LOUPEでは最近「ゲーム化する」ということにもチャレンジしています。これは、同じ学習を問題を解くのではなく、ゲーム感覚で学べる手段の開発です。今回トライしたのは、整数と小数の大小を学習できるオリジナルのカードゲームづくり。さいころの出た目によって数字の位が大きく変わるこのゲームは、教科書の問題集を見ていた時に思いつきました。学校現場にいたころには選ばなかったであろう近道やまわり道。ときにはこれが、有効な手立てになるのだなぁ。そんなことをしみじみと感じながら、今日も研究ノートを開いています。