AO入試が未来の主役に!?

変革の真っ只中にある大学入試。日本の大学入試には、①一般選抜(旧一般入試)、②学校推薦型選抜(旧指定校推薦・公募推薦)、③総合型選抜(旧AO入試)の3つのスタイルがありますが、それらの中でも「総合型選抜」は、文部科学省が大手を振って推進を加速させようとしている注目度の高い選抜方法です。

AO入試(総合型選抜)とは?

総合型選抜はもともとAO(アドミッション・オフィス)入試と呼ばれていた選抜方法で、2020年の教育改革で「総合型選抜」という名称に変更になりました。AO入試は、大学側が提示する入学者の受け入れ方針(アドミッションポリシー)と学生の学びたいことが合致しているかを見極めるもので、アメリカをはじめとする海外の大学では一般的な選抜スタイルです。評価の方法としては、志望理由書や活動報告書、面接、小論文、プレゼンテーションなど様々なものがあります。

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スポーツやコンテストの受賞歴など、一芸に秀でたスキルを持つ人だけが評価される試験だと思われがちですが、そうではありません。大事なのは実績そのものではなく、これまでに身に着けてきた力を、大学に入ってからどのように将来に結びつけて活かしていくのかといった思いがあること。問題意識を持って世の中を見渡し、「大学でこれについて学び、この問題を解決したい」といった明確な意思と意欲があることが重要視される試験なのです。

では、なぜいまAO入試に注目が集まっているのでしょうか。『2024年の大学入試改革』ではこのように説明されています。

欧米で構築されたモデルを模倣しながら、よりよい製品を生み出していたこれまでは、ある意味で「正解ありきの世界」でビジネスを展開していたといえます。そういう時代には、正しい答えに素早く到達できる偏差値教育がマッチしていたのでしょう。しかし、これからは「正解のない世界」において、より価値のあるものを生み出すことが求められます。それができるのは、大学に入学するにあたって「自分の興味があることや好きなことを、より深く学びたい」という明確な意思を持っている人物です。総合型選抜とは、そのような人材を輩出するためのものなのです。 

by『2024年の大学入試改革 石川一郎』

戦後、欧米に追いつけ追い越せとばかりに努力を積み重ねてきた日本。経済が大きく発展したのは、先進諸国を模倣しながら、高品質の機能を加え改善を重ねることで付加価値を高めることができたからです。こうした正解ありきの世界では、より早く正解にたどり着ける人が活躍することができました。教育のゴールは、知識や処理能力を身に着けさせること。偏差値や学歴といったモノサシが機能し、ペーパーテストで学生の選抜を行うといったことが、理にかなっていたのです。

ところが、これから待ち受ける未来では、偏差値や学歴といった指標だけでは活躍する人材を見極めることはできません。世界中がモノであふれる今、IT技術の発展やグローバル化の到来で、模倣するだけでは価値が生み出せなくなりました。加えて、ロシアでの戦争や感染症の流行など、地球規模で解決しなくてはならない問題もたくさんあります。そんな時代に求められるのは、未知の世界や問題に直面したときに自分なりの考えや解決策を見出し、それをやりぬく力を身に着けること。知識よりも学ぶ意思や意欲を育み、新しい価値を創造できる人材の育成こそが、日本にとっての最重要課題なのです。

実際には私立大学でも、まだ入学者の10~15%ほどに留まっているAO入試。採点の難しさや人材の不足など、普及までに乗り越えなければならない課題もたくさんあるのが現状です。同時に私たち親世代も、価値観のアップデートを迫られています。過去の成功体験に囚われることなく、これから待ち受ける未来を想像しながら入試の在り方について考えていけたらいいですね。