絵本は豊かな”ことばの宝ばこ”

「ことば」の力は偉大です。同じ赤でも、「やわらかい赤」と「毒々しい赤」からイメージされる色や雰囲気はちがいます。こどもたちには、ことばの引き出しを広げ、豊かな表現方法を身に着けてほしいもの。けれども、作文を書かせてみると、「すごい」「楽しい」「うれしい」といったお決まりのことばばかりが並んでしまうということがよくあります。ことばの豊かさが乏しいのは、少し残念です。

そこでおすすめしたいのが、絵本です。絵本は豊かな表現の宝庫です。たとえば、絵本の代名詞『スイミー』には、”にじいろのぜりーのようなくらげ”に代表される美しい比喩がたくさん出てきます。小さなころから読んでいる馴染みの絵本を、改めてじっくり読んでみると、新しい発見があるかもしれません。

先日のこと。息子と一緒におーなり由子さんの『ことばのかたち』という作品を読みました。オレンジ色の背景にタンバリンが一つ描かれているページを見て、彼の手が止まります。少しの間考えたあと、ページに手を触れながら発せられたのは、「あったかい色。オーブンで焼いたみたいな色」ということばでした。絵本にでてくる色や形の比喩表現に興味を楽しむうちに、生活体験の中から感じ取った「あたたかい感覚」が自然とこぼれできた、そんな様子でした。大人の私には浮かんでこない、ほっとするような表現は、彼ならでは。とても素敵です。

声に出して楽しむ、絵を見て楽しむ、ことばから浮かぶ情景を想像して楽しむ…。そんなふうにして味わった経験は、自らの表現力を広め、深めてくれるはずです。LOUPEには、たくさんの絵本を揃えます。たくさんの絵本を読み、味わい、豊かな表現力につなげてほしいと思います。